カレーとスパイス ~カレーの起源と歴史、スパイスの種類と効用~

 

問題です。

 

トウガラシの果実で、一番辛い部分は、どこでしょうか?

A:種子
B:果実の皮の部分、果皮(かひ)
C:果実の中心部分、胎座(たいざ)

答えは、このページの最後↓

 

目次

1. カレーの起源と歴史
2. スパイスの種類と効用

1. カレーの起源と歴史 ~インド、イギリス、日本~

028491

 

「カレー」(curry、カリー)とは、

一般に、○○などの数種類の香辛料(spice、スパイス)を混ぜ合わせた「混合香辛料」、あるいは、それで味付けをした料理のことを指しますが、

これは、イギリスが、こうしたインドの調味料、インド料理を「カレー」と称して、イギリス料理に取り入れたことにより、世界中に普及した言葉です。

 

世界が「カレー」と呼ぶ、インドの煮込み料理は、本来、それぞれに固有の名称があり、

インド料理に、「カレー」という名前の料理はありません。

 

「カレー」は、インド周辺で生まれ、18世紀にイギリスに伝わりました。

 

106119

 

イギリス人の船乗りが、航海中に、シチューが食べたくて、

長持ちのしない「牛乳」のかわりに、日持ちのする「カレー」を使ったことが、「イギリスのカレー」の由来の一つとされています。

 

ですが、イギリス人がインド人のように、多種多様な香辛料を使いこなすことは至難の業でした。

 

そこで、イギリスのクロス・アンド・ブラックウェル(Crosse & Blackwell、C&B)社が、

あらかじめ、スパイスを調合したものを「カレー粉」(curry powder、カリーパウダー)として、商品化し、

これにより、カレーは、イギリスの家庭料理として普及します。

 

そして、ソースを重んじるフランス料理の影響から、

小麦粉をバターなどの油脂で炒めた「ルー」(roux、ルウ)で、とろみを出した、

「カレールー」(curry roux)が誕生します。

 

085982

 

日本には、明治初期に、イギリスから、イギリス料理として伝来し、

カレーを米飯にかけた「カレーライス」(curry rice、カリーライス|curry and rice、カリーアンドライス|curried rice、カリードライス)が普及し、

1968年には、大塚食品が、世界初の家庭用レトルト食品「レトルトカレー」(商品名:ボンカレー)を発売します。

 

大塚食品 レトルトカレー 松山容子

「松山容子」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)

 

現在では、給食メニューの人気アンケートでも、常に上位に挙がっているなど、

ラーメンと並んで、日本の国民食と呼ばれるほど、人気のある食品となっています。

 

ちなみに、「カレーならココ一番や!」というキャッチコピーで有名な「カレーハウスCoCo壱番屋」(通称:ココイチ)は、

日本各地や、台湾、タイ、韓国、米国、香港などにも店舗を持ち、

2013年1月17日より、「世界で最も大きいカレーレストランのチェーン店」として、ギネス世界記録に認定されています。

 

TS320724

「壱番屋」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)

 

2. スパイスの種類と効用 ~トウガラシ、ターメリック、クミンシード~

1637cbb0de5d6430a13b850011e89dec_s

 

カレーに欠かせない、スパイス。

カレーの本場インドなど、世界には、700種以上のスパイスがあると言われています。

 

ところが、本場インドでは、使うスパイスの種類は多くても10種類程度。

日本では、20~30種類ものスパイスが使われています。

 

これは、インドでは、「パンチの効いたカレー」が好まれるのに対し、

日本では、「マイルドなカレー」が好まれるからです。

 

スパイスの種類とその特徴 ~辛み、色、香り~

①主に、辛みに関係している
  • カプサイシンの辛みの「トウガラシ」(唐辛子|果実)
  • ピペリンの辛みの「コショウ」(胡椒|ペッパー、pepper|果実)
②主に、色に関係している
  • クルクミンの黄色の「ターメリック」(turmeric|ウコンの根茎〈こんけい〉)
③主に、香りに関係している
  • カレー特有の香りの「クミンシード」(cumin seed|クミンの種子)
  • ○○ムシ/オレンジのような香りの「コリアンダー」(coriander|コエンドロ、coentro|葉/果実)
  • 樟脳(しょうのう|樟〈くすのき〉の精油の主成分)のような香りの「カルダモン」(cardamon|ショウズク、小豆蒄|種子)
  • さわやかで清涼感のある香りの「ローリエ」(laurier|ベイリーフ、bay leaf|ゲッケイジュ、月桂樹|葉)
  • メープルシロップのような香りの「フェヌグリーク」(fenugreek|種子)

 

  • 独特の甘い香りの「メース/ナツメグ」(mace/nutmeg|ニクズク、肉豆蒄|仮種皮/種子)
  • 独特の甘い香りの「シナモン」(cinnamon|ケイヒ、桂皮|樹皮)
  • バニラのような香りの「クローブ」(clove|チョウジ、丁子|チョウジノキの蕾〈つぼみ〉)
  • 上記3つを合わせたような香りの「オールスパイス」(allspice|ピメント、pimento|葉/蕾/果実)

 

  • 「アニシード」(aniseed|アニス、anise|西洋ウイキョウ|種子のような果実)
  • 「フェンネル」(fennel|ウイキョウ、茴香|種子のような果実)
  • 上記2つのような甘い香りの「スターアニス」(star anise|八角〈はっかく〉ウイキョウ|トウシキミの果実)
  • 特有の辛み、薄い黄色、独特の香りを持つ「ショウガ」(生姜|ジンジャー、ginger|根茎)

 

特に、

①「トウガラシ」
②「ターメリック」
③「クミンシード」

この3つは、カレーには欠かせない重要なスパイスで、

 

d43a52a806e0d5777d007506eb09885f_s

 

その中でも、特に、

③「クミンシード」は、

これがないとカレーにはならないというほどに重要なスパイスです。

 

目次

①「トウガラシ」
②「ターメリック」
③「クミンシード」

①「トウガラシ」 ~カレーの辛みは、カプサイシンの辛み~

トウガラシ
トウガラシの果実

「トウガラシ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)

 

「トウガラシ」は、中南米が原産で、

「タカノツメ」(鷹の爪)など、幸味の強い、chili系の品種「チリペッパー」(chili pepper)から、

「シシトウガラシ」(獅子唐辛子|シシトウ)など、辛味の弱い、sweet系の品種「スウィートペッパー」(sweet pepper)まで、

その種類は、3000種類以上にも上ると言われています。

 

トウガラシの辛味成分の主体は、「カプサイシン」(capsaicine)であり、

その効用は、

  • 食欲促進
  • 消化液分泌促進
  • 発汗促進
  • 血行促進
  • 健胃(胃を丈夫にする)
  • 駆風(くふう|胃腸内にたまったガスの排出)
  • 刺激
  • 鎮痛
  • 強心(きょうしん|心臓の強化)

など、食欲不振、消化不良、夏バテ、冷え症などの予防・改善に有効とされています。

 

トウガラシの辛みの度合いを示す単位を「スコヴィル値」(scoville scale、スコヴィル-スケール)といい、

砂糖水で薄めていき、どの濃度まで辛みを感じとれるかで、辛みの度合いを判断する数値です。

 

現在では、測定機で、カプサイシンの量を、直接はかることができますが、

「スコヴィル値」が長年使用され、あまりに普及しているため、

機械測定したカプサイシンの量の数値を、スコヴィル値に変換し直して、表記する方法が一般化しています。

 

スコヴィル値
「純粋なカプサイシン」1600万
「キャロライナ・リーパー」(キャロライナの死神|世界一辛いトウガラシ)156万9300~220万
「ハバネロ」10万~35万
「タカノツメ」3万~5万
「シシトウガラシ」0

 

「純粋なカプサイシン」を、舌で感じられなくなるようにするには、砂糖水で、1600万倍に薄める必要があります。

 

「1mgのカプサイシン」だと、

「1mg」:16,000,000mg

「1mg」:16,000g

「1mg」:16kg

16リットルの砂糖水を飲まないと、辛みが消えません(笑)

 

ちなみに、トウガラシには、防虫効果があることが古くから知られており、

  • 書物
  • ひな人形などの物品
  • 米などの食品

の保存に用いられていたこともあるそうです。

 

なお、赤トウガラシに含まれる、赤い色素成分「カプサンチン」(capsanthin)は、辛味成分である「カプサイシン」とは別物です。

 

②「ターメリック」 ~カレーの黄色は、クルクミンの黄色~

ウコン
クルクミン

「ウコン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)

 

ターメリックの原料である「ウコン」(黄染草、キゾメグサとも)は、

インドが原産で、その生産量・輸出量は、ともに世界一であり、

現在、およそ50種類ほどある「ウコン」の内、インドだけで、30種類を超える、新しい品種が育てられています。

 

ウコンの根茎「ターメリック」に含まれる、黄~赤の色素成分「クルクミン」(curcumin)は、

  • 肝機能の改善・回復
  • 胆汁分泌促進
  • 解毒
  • 抗菌
  • 抗酸化
  • 抗がん
  • 抗炎症
  • 抗アミロイド

といった、様々な効用があり、

 

このほかにも「ターメリック」には、

  • 健胃(胃を丈夫にする)
  • 消炎(炎症を抑制する)
  • 鎮痛
  • 抗血栓(心臓や血管内の血液の固まり〈血栓、けっせん〉を防ぐ)
  • コレステロール値の低下

など、その生理活性と医学的有用性は、近年、盛んに研究されています。

 

なお、日本のカレー粉に使われているのは、苦みのない「秋ウコン」であり、

健康食品として普及している、苦みのある「春ウコン」とは異なります。

 

「春ウコン」と「秋ウコン」 ~どっち!?~

 

ウコンには、2つは別の品種があり、

名前のとおり、春に開花するのが「春ウコン」、秋に開花するのが「秋ウコン」です。

 

日本では、「春ウコン」を姜黄(キョウオウ)、「秋ウコン」を鬱金(ウコン)というのに対し、

中国では、「春ウコン」を鬱金(ウコン)、「秋ウコン」を姜黄(キョウオウ)と言います。

 

これは、日本にウコンが伝来し、普及する過程で、これら情報が混乱し、正しく伝わらなかったためであると考えられています。

 

「春ウコン」は、クルクミンを、0.3%程度、

「秋ウコン」は、クルクミンを、3~4%含んでいますが、

どちらのウコンが優秀かについては、諸説あり、専門家の間でも、意見が分かれています。

 

ウコンの安全性は、まだ十分に検討され尽くしていないため、

医療機関で処方される、医薬品漢方薬の中には、ウコンを含有するものは存在しません。

 

ウコンの摂り過ぎによる、薬剤の副作用として、肝臓が障害を受ける「薬剤性肝障害」(Drug-induced Liver Injury)が、多数、報告されています。

 

クルクミンの摂り過ぎによる、肝臓の「脂肪変性」(fatty degeneration)も、報告されています。

 

特に、肝障害患者においては、サプリメントとして市販されている通常量で、死亡例を含めた、重篤な状態に陥った事例が、少なからず、報告されています。

 

ウコン、ターメリック、クルクミンは、

  • カレーはもちろん(カレー粉の20~40%が、秋ウコン)
  • 黄色い着色料を使用している、からし、たくあんなどの漬物、水産ねり製品、栗のシロップ漬、和菓子、ウィンナーソーセージ

などに含まれていますので、

 

肝臓に持病のある方はもちろん、

お酒を飲むときなど、肝臓に負担をかけるときには、口にしない方がいいかもしれません。

 

なお、コショウの辛味成分の一つである「ピペリン」(piperine)は、薬物代謝に影響を与え、クルクミンの吸収効率を高めることが知られています。

 

③「クミンシード」 ~カレーの香りは、クミンの香り~

クミン

クミンシード

「クミン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)

 

クミンの種子「クミンシード」は、

地中海沿岸原産で、

強い芳香と、ほのかな辛味や苦味があり、

  • 食欲促進
  • 消化促進
  • 健胃(胃を丈夫にする)
  • 駆風(くふう|胃腸内にたまったガスの排出)
  • 整腸
  • 鎮痛
  • 鎮痙(ちんけい|痙攣〈けいれん〉を鎮める〈しずめる〉)
  • 鎮静
  • 解毒

など、香辛料、薬用植物としての歴史は最も古く、

原産地のエジプトでは、胃腸薬や鎮痛剤、ミイラの防腐剤などに利用されていました。

 

カレー特有の香りの正体は、「クミンシード」の強い芳香であり、

クミンの香りには、胃などの消化管の蠕動運動(ぜんどううんどう、蠕き運動〈うごめきうんどう〉、peristalsis)を活発にするなど、食欲を高める効果があります。

 

中世ヨーロッパでは、男女間の貞節の象徴とされ、結婚式のとき、クミンをポケットへ忍ばせる風習があったといわれています。

 

問題の答えは、「C:果実の中心部分、胎座(たいざ)」です。

 

「A:種子」には、辛味成分がほとんど含まれていません。

 

「B:果実の皮の部分、果皮(かひ)」にも、含まれていますが、

「C:果実の中心部分、胎座(たいざ)」ほど、多くはありません。

 

トウガラシは、この胎座で、辛味成分を作っているのです。

 

コメント