chapter 1. 「科学とは」 ー論理の章ー

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科学(かがく|science、サイエンス)とは、

  1. 定立し、
  2. 帰納・演繹し、
  3. 証明する、

プロセスです。

 

 化学(かがく|chemistry、ケミストリー)は、自然科学の一分野で、同音の科学と区別するために、「ばけがく」と言われることがあります。

 

 

第一章は、科学の方法、思考の形式と法則「論理」(ろんり|logic、ロジック)についてです。

  • 演繹と三段論法が同じであること、
  • 否定と後件否定が異なること、

この2つは、特に間違えやすいところですので、注意して読んでみて下さい。

イラスト

 

 

 

 

1. 定立 ~命題を定める・立てる~

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命題(めいだい|proposition)とは、真偽の判断の対象となるもので、

真偽とは、真と偽であり、

真(しん|True、T)とは、正しいこと、

偽(ぎ|False、F)とは、正しくないことです。

 

例えば…

「スズメは、飛ぶ」

これは、実際にスズメが飛ぶか飛ばないか、真偽の判断の対象となるので、命題です。

 

そして、命題を定めること、立てることを、定立(ていりつ)と言います。

 

 科学とは、正しいかどうかを問題にするものです。その判断の対象が命題。命題とは、科学の対象そのものです。

 

2. 帰納・演繹 ~命題から命題を導き出す・引き出す~

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①帰納 ~小さな命題から、大きな命題を導き出す~
②演繹 ~大きな命題から、小さな命題を引き出す~

 

①帰納 ~小さな命題から、大きな命題を導き出す~

 

帰納(きのう|induction)とは、個々の小さな命題から、一般に通用するような大きな命題を導き出すことです。

 

“一般化”とも言います。

 

例えば…

「スズメは、飛ぶ」

「カラスも、飛ぶ」

「ハクチョウも、飛ぶ」

というような、個々の小さな命題から、

「すべての鳥は、飛ぶ」

というように、一般に通用するような大きな命題を導き出す場合です。

 

 元の命題が正しくても、帰納された命題が正しいとは限らない。

 

②演繹 ~大きな命題から、小さな命題を引き出す~

 

演繹(えんえき|deduction)とは、一般に通用するような大きな命題から、個々の小さな命題を引き出すことです。

 

例えば…

「すべての鳥には、羽がある」

というように、一般に通用するような大きな命題から、

「スズメには、羽がある」

「カラスにも、羽がある」

「ハクチョウにも、羽がある」

というように、個々の小さな命題を引き出す場合です。

 

 元の命題が正しければ、演繹された命題はすべて正しい。

 

演繹の隠れた前提と、三段論法

 

演繹には、隠れた前提があります。

 

先の例でいうと…

「すべての鳥には、羽がある」という大きな命題から、

「スズメには、羽がある」という小さな命題を引き出すとき、

「スズメは、鳥である」という命題が、隠れた前提になっています。

 

つまり…

「スズメは、鳥である」(隠れた前提)、

「すべての鳥には、羽がある」(大きな命題)、だから、

「スズメには、羽がある」(小さな命題)ということが言えるのです。

 

これを、三段論法(さんだんろんぽう|syllogismus)と言います。

「スズメ → 鳥 → 羽がある」

 

風が吹けば、箱屋が儲かる!?

 

  1. 「風が吹けば、土ぼこりが立つ」
  2. 「土ぼこりが立つと、土ぼこりが目に入る」
  3. 「土ぼこりが目に入ると、盲(めくら)が増える」
  4. 「盲が増えると、三味線が売れる」
  5. 「三味線が売れると、三味線に使うネコの皮が必要になる」
  6. 「三味線に使うネコの皮が必要になると、ネコが減る」
  7. 「ネコが減ると、箱をかじるネズミが増える」
  8. 「箱をかじるネズミが増えると、箱の需要が増える」
  9. 「箱の需要が増えると、箱屋が儲かる」

 

「風 → 土ぼこり → 目 → 盲 → 三味線 → ネコの皮 → ネコ → ネズミ → 箱 → 箱屋」

 

3. 証明 ~命題の真偽を証す・明らかにする~

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証明(しょうめい|proof)とは、正しい命題から、ある命題の真偽を証すこと、明らかにすることです。

 

このとき、正しい命題を、証拠とか、根拠とか言ったりします。

 

例えば…

「真犯人が、存在する」という事実から、

「私は、犯人でない」ことを主張する場合です。

 

このとき、「真犯人が、存在する」ことは、証拠であり、この主張の根拠です。

 

 実験(じっけん|experiment)とは、事実を証拠とする証明です。

 

間接証明

 

命題を直接証明しなくても、間接的に証明できる方法があります。

 

・対偶法 ~論理的に同じ意味を持つ命題を証明する~
・背理法 ~後件否定が背理することを証明する~

 

・対偶法 ~論理的に同じ意味を持つ命題を証明する~

 

対偶(たいぐう|contraposition)とは、論理的に同じ意味を持つ命題の対(つい)のことです。

 

例えば…

「犯人は、現場にいた」と、

「現場にいなかったのならば、犯人でない」は、

論理的に同じ意味を持つ命題の対、対偶です。

 

このとき、

「私は、犯人でない」ことを直接証明しなくても、

「私は、現場にいなかった」ことを証明することで、

「私は、犯人でない」ことを間接的に証明することができます。

 

そして、

こうした対偶を使った証明法を、対偶法と言います。

 

 ちなみに、この例は、現場不在証明(アリバイ、alibi)です。

 

対偶が論理的に同じ意味であることの証明

 

ベン図

 

「A ならば B」の否定は、「A なのに Bでない」、「A かつ Bでない」です。

「Bでない ならば Aでない」の否定は、「Bでない なのに A」、「Bでない かつ A」です。

 

「A かつ Bでない」と、

「Bでない かつ A」。

 

この二つの否定は、論理的に同じ意味です。

 

否定が同じなら、肯定もまた同じ。

 

「A ならば B」と、

「Bでない ならば Aでない」。

 

この二つの命題は、論理的に同じ意味です。

 

 「A ならば B」と、その否定の否定「Aでない または B」も、論理的に同じ意味です。

 

否定と後件否定

 

表1

 

後件否定(こうけんひてい)とは、自然な否定のことです。

 

例えば…

「私 は 犯人でない」の否定は、「私 かつ 犯人」ですが、

「私 は 犯人でない」の後件否定は、「私 は 犯人である」です。

 

ところが…

後件否定は、命題をきれいに否定しているわけではありません。

 

このことは、二重否定(にじゅうひてい|否定の否定)の間に対偶をとってみると、よく分かります。

 

「A ならば B」を後件否定し、

「A ならば Bでない」の対偶をとって、

「B ならば Aでない」を後件否定すると、

「B ならば A」。

 

はじめの命題と合わせると、「A = B」という不合理な結果を招きます。

 

・背理法 ~後件否定が背理することを証明する~

 

表2

 

背理法(はいりほう)とは、証明したい命題の後件否定が背理すること(矛盾すること)を証明して、元の命題が”真”であることを間接的に証明する方法です。

 

例えば…

「私は、犯人でない」ことを証明するために、

「私が、犯人である」と仮定すると、矛盾が生じることを証明して、

「私は、犯人でない」ことを間接的に証明する場合です。

 

背理法と真偽不明確命題

 

背理法は、後件否定の反証を挙げるだけで、肯定の証明ができる、優れた証明法です。

 

ですが、真偽の不明確な命題には使えません。

 

例えば…

「すべての鳥は、飛ぶ」という命題は、

「アヒルは、飛ばない」という意味では”偽”ですが、

「スズメは、飛ぶ」という意味では”真”です。

 

「すべての鳥が、飛ばない」と仮定すると、スズメが飛ぶことに矛盾するからといって、

「すべての鳥は、飛ぶ」ことが証明されたことにはなりません。

 

やはり…

こうした、真偽の不明確な命題には、背理法が使えないことになります。

 

そもそも、真とも偽とも解せない命題は、通常は証明ができません。

 

では、いったいどうやってこの命題を証明すればよいのでしょうか?

 

次章では、この真偽不明確命題の証明を行います。

 

~To be continued next chapter~

 

ベン図2

 chapter 2. 「真理率」 ー真偽の章ー

 

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